収蔵品紹介 Introduction of collections

木 蘭

Mu-lan

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作者 橋本関雪 Hashimoto Kansetsu
制作年 大正7年 1918
種別 日本画 Japanese painting / Folding screen
作品寸法 H 190.0 ✕ W 376.2(✕2)cm
備考 大正7年、第12回文展に出品され特選を受賞した作品。関雪は本作の入賞後、永久無鑑査となった。

画題は、中国に伝わる民話より。老病の父に代わり、娘の木蘭が男装して従軍し、各地で勲功を上げ続け、自軍を勝利に導いて帰郷するというストーリー。陳の釈智匠『古今楽録』に収められた『木蘭詩』(または木蘭辞)が記録された最も古い文献とされている。本作は、ストーリーの中の帰郷の途につく木蘭と従者が、馬を休ませている場面。従者から少し離れた木陰で、兜を脱ぎ束の間少女の優しい顔に戻る木蘭が鮮やかな群青の衣服で描かれている。

この作品が描かれた1918年から約100年後の2月16日、関雪の描いた「木蘭」はまるでお話の中の彼女のように、長い旅を終え白沙村荘へと帰郷しました。


【木蘭詩全文】

噸噛復職噛 木蘭當戸織   パタンパタンまたパタン、木蘭は戸口に向かって機を織っている。
不聞機梓聾 唯聞女歎息   でも今日は、機の音が聞こえない。木蘭の溜息だけが聞こえてくる。
問女何所思 問女何所憶   「木蘭よ、誰かに恋をしたのかね?何かを思い出しているのかね?」
女亦無所思 女亦無所憶   「恋をしているのでも、思い出してるのでもありません。
昨夜見軍帖 可汗大鮎兵   昨晩、軍の徴兵名簿を見たの。皇帝は大々的に兵隊をお集めです。
軍書十二卷 卷卷有爺名   軍書十二巻の徴兵名簿の、どの巻にも父さんの名前があります。
阿爺無大兒 木蘭無長兄   父さんには大人の男の子がなく、わたしに兄さんはいません。
願爲市鞍馬 従此替爺征   だから、私が鞍と馬を買って、父さんの替わりに出征します。」
東市買駿馬 西市買鞍韉   彼女は東の市場で駿馬を買い、西の市場で鞍と鞍敷を買い、 
南市買轡頭 北市買長鞭   南の市場で轡を買い、北の市場で鞭を買った。
旦辭爺孃去 暮宿黄河邊   彼女は朝、父母に別れを告げ、日暮れには黄河のほとりに泊まった。
不聞爺孃喚女馨     
但聞黄河流水鳴濺濺     両親が娘を呼ぶ声が聞こえない。聞こえるのは満々たる黄河の昔のみ。
旦辭黄河去 暮至黑山頭   昏夜明けに黄河を出発して、夕暮れに黒山の麓に着いた。
不聞爺孃喚女聾 
但聞燕山胡騎鳴啾啾     両親が娘を呼ぶ声が聞こえない。聞こえるのは燕山で鳴く軍馬の悲しい声だけ。
萬里赴戎機 關山度若飛   卦万里の道を決戦場にむかい、関所や山々を飛ぶように越える。
朔氣傅金析 寒光照鐵衣   北の寒い風は銅鑼の音を伝え、冷たい光が鉄のよろいを照らす。
將軍百戰死 壯士十年歸   将軍は百戦のすえに戦死し、勇士は十年たって凱旋した。
歸来見天子 天子坐明堂   戦場から帰り、御殿で玉座に座る皇帝に謁見した。
策勳十二囀 賞賜百千彊   木蘭は功績抜群で、十二階級特進、褒美にもらった品は百千余り。
可汗問所欲 木蘭不用尚書郎 皇帝がさらに希望をたずねると、 「尚書郎のような官位はいりません。
願馳千里足 送兒還故鄕   私めは、千里の馬を駆って、故郷に帰ることを希望します。」
爺嬢聞女來 出郭相扶將   両親は、娘が帰ると聞いて、城郭の外に出て寄り添い待った。
阿姉聞妹來 當戸理紅妝   姉は、妹が帰ると聞いて、戸口に向かって化粧を直した。
小弟聞姉來 磨刀霍霍向豬羊 弟は、姉が帰ると聞いて、豚や羊をさばくため包丁を磨いた。
開我東閣門 坐我西閣牀   木蘭は帰ると、東の建物の門をあけ、西の建物の長椅子に腰掛けた。
脱我戰時袍 著我舊時裳   そして軍服を脱ぎ、昔の衣装に着替えた。
當窗理雲鬢 對鏡帖花黄   窓辺に向かって豊かな髪を整え、鏡を掛けて見ながら白粉をつけた。
出門看火伴 火伴皆驚惶   門を出て、戦友たちに会うと、戦友はみな、腰をぬかして言った。
同行十二年 不知木蘭是女郎 「十二年もいっしょにいたのに、木蘭、君が女性とは気づかなかった!」
雄兎脚撲朔 雌兎眼迷離   「雄ウサギは足を少し引きずり 雌ウサギは目がぼんやりとしているけれど
双兎傍地走 安能辯我是雄雌 それでも、もし二匹が並んで走ったら、どっちがオスかメスか、見分けられるものではありませんよ。」

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